ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
「清愛の輪」は存続出来た。
愛津がえれんの代理を務めて、法人の政治団体として機能している。一時の流れで彼女を批判していた為政者達も、彼女に実刑が下されてからは、再びその理念を引き継いで、愛津達にも協力的だ。もとより若松や伊藤、磯部などは、いつかこうなるだろうと想定していた。彼女を失くしてもこれまでの実績が無にならないよう、根を回したりもしていたという。
「英真ちゃん、人手不足のところ悪いんだけど、私も来年からアルバイトになっていい?」
「代表は?!」
「臨時で、若松さんにお願いしてる。私、政治を勉強したくて」
織葉は「清愛の輪」を離れた。えみるも一緒だ。愛津はえれんとしょっちゅう面会しているが、「清愛の輪」が実権を取り戻すために必要な教えを彼女に乞うにしても、限界がある。それでも、英真を始めとする仲間達は、彼女の理念を受け継ぐ人物として、愛津を選んだ。
かくて今更、通信制の学校に通うことになるとは夢にも思わなかったが、今度こそ、愛津は為政者になるという目標を明確にした。これがなければ、怪我の治療中、毎日通って世話していたえみるを織葉が選んだ時、きっと愛津は酷く打ちのめされていた。