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ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪


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 四年後、春。

 今では馴染みの刑務所の前で、愛津は磯部と鉢合わせた。公安委員会における最高権力者である彼女は、「清愛の輪」が収容所及び人為出産施設の権限を返上しなくて済むよう、ここ数年も尽力してくれていた。甲斐あって、女の犯罪被害や家庭内でのトラブルは最低値を維持して、約十年前は深刻に問題視されていた少子化も、解決傾向にある。

 遠目に見ても肩幅で彼女と特定出来る磯部は、内側に巻いた黒髪の先を僅かに揺らして、夜の清水を彷彿とする目を細めた。


「お世話になっております、おはようございます」

「おはよう。それから、大学卒業おめでとう、愛津ちゃん」

「有り難うございます。この三年間、磯部さんや英真ちゃん達にも、すごく助けていただきました。これからはしっかり働きます」

「初めての選挙出馬に向けて、愛津ちゃん自身の考えも固めていかなければね」



 磯部と別れて、愛津は本館のエントランスで、看守達から、えれんの身柄を引き受けた。身内の迎えは不要だったが、愛津は、当然の流れで彼女に今日の約束を取りつけていた。

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