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ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪



「お疲れ様です、神倉さん。お荷物、お持ちします」

「いらないわ。わざわざお仕事まで休んでくれて……。来てくれただけで十分」

「すぐご自宅へ行きますか?朝食がまだでしたら、私もですので……」


 タクシー乗り場へ向かいながら、愛津はえれんと、今後のことを話し始めた。

 えれんは、自宅に戻る気はないという。拘置中、愛津が彼女に、織葉がえみるを呼び寄せたことを伝えたのも一因しているのだろう。
 確かに、えみるが役員を辞めたのも、彼女への不信感からだ。愛津でも彼女の立場なら、自分の家でも戻りにくい。


「えみるんのこと、気になさらないで下さいね。彼女にとって、神倉さんは恋敵なんです。私、気持ちは分かります」

「愛津ちゃんは、織葉のこと、このままで納得しているの?」

「えみるんは、織葉さんがいないとまた壊れてしまいます。動画チャンネルも再開して、収益化出来たのだって、恋がえみるんを強くしたからですし、織葉さんもああいうの好きだったんじゃないかなって」


 織葉が加わったえみるの動画チャンネルは、一気に大手に昇格した。彼女達が「清愛の輪」を話題に出すことは皆無に等しく、最新コスメや美容情報、話題の店を紹介している姿は、とてもあんな修羅場をくぐり抜けてきたようには見え難い。えみるの持ち前の明るさと、かつてえれんの代弁者でもあった織葉の人目を引く容姿は、視聴者達のニーズに填まった。
 中には、きわどい話題を待っている視聴者達もいるだろう。しかしえみるが「清愛の輪」を必要としなくなったのと同じで、織葉からも、彼女らの好奇心を満たせる話題はこれから先も出ないだろう。

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