ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
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「皆さん、こんにちは。えみるです。今日は、女性の視聴者様必見の企画をします。嫁・姑は仲良く同じ屋根の下で暮らしていけるか。或いは、交際も認めてもらえず、嫁が姑を追い出すことになるのか。を、検証します!というのは私のお義母さんに当たる人が……元上司なんですけどね、今日帰ってくるんです。今撮影してるの織葉さんには内緒です、ヤラセなしなので、このあとはあすこの隠しカメラから中継しますね。いつもはコスメやスイーツを可愛く紹介している当チャンネル、今日は修羅場の匂いがしますよぉ」
「どうも、家政婦の山西です。私はご主人様のお帰りに備えて、お掃除をしています。少し音が立ちますよー……大目に見て下さいね」
「あ、山西さん、お掃除有り難うございます」
えみると山西のかけあいが、客間の外まで聞こえていた。
扉を離れて、織葉は四年振りにえれんからの通知を受けたLINEを開く。愛津と食事へ向かっている、という内容だった。
えみるが動画チャンネルを再開して、三年が経つ。「清愛の輪」を脱けて一年、彼女の貯金が底をつきかけたのがきっかけだったが、賭けに出て今日までの間、彼女は目に見えて元の明るさを取り戻した。完全に立ち直ってはいないだろう。娘を刺したえれんでさえ、心理士が頭を抱えていたと聞く。友人を手にかけたえみるの闇は、底知れない。