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ジェンダー・ギャップ革命

第2章 唾を吐く貧民



「なんだ、指、ジュレで汚したのね。神倉さんてばお茶目。私も織葉さんに拭われたーい」

「お手拭き使わないの?!」

「神倉さんはホワイトな議員さんだから、ジュレ一滴でも、食べ物を粗末にされません」

「じゃあ自分で舐めれば……」

「唇以外のキスくらいで驚くなんて、元SM女王様って、うぶだったんですね」

「しかも織葉さん、面倒見良いですもん。母娘と言っても義理ですし、イチャついてても問題ありませんけどね」


 小鉢を平らげた頃、どこかで誰かが見計らってでもいたタイミングで、椀盛が運ばれてきた。

 井原はまたえれんら母娘と思い出話に花を咲かせて、今度は愛津達にも関心を向けた。古参のメンバーは、とっくに彼女と顔見知りらしい。彼女が構いたがったのは、主に愛津やえみるだ。差し障りない質問にいくつか答えて、彼女が立ち去るのを見送ると、柚香るとろみ汁に箸を沈めて、彩り豊かな野菜の中心から鯛の練り物を一口大に切ってつまんだ。

 夏野菜と貝の煮物がテーブルを華やげる頃、酒の入った九条やありあ、月村は、すこぶる無礼講にえれん達と盛り上がっていた。
 離婚経験のあるえれんと久城は元配偶者にあらん限りの罵詈を吐いて、月村も実生活は平穏ながら、彼女らの男嫌いに賛同している。配偶者は愛している、だが前政権でのさばっていた男達には反吐が出る、というのが彼女の本心だ。ありあは前職で関わった客を始め、今の勤務地にいる咎人達との逸話を披露していた。それらはどれも過激で淫らで、面白がって話に食いつくえれん達の傍らで、比較的酩酊の浅い織葉達が、襖の開く気配を先読みしては、彼女に話を中断させる。

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