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ジェンダー・ギャップ革命

第2章 唾を吐く貧民



 苦楽を共にした人間同士特有の、一種の家族めいた雰囲気が、晩餐の席を満たしていた。

 そこで愛津が何となしに思い出していたのは、織葉と何度目かの使いに出た時のことだ。


 昨年だ。本部の仕事も慣れてきた頃で、用事を済ませて彼女と帰路を歩いていた時、女が一人、前方の角から出てきた。
 えみるや英真の好みに近い、実用性に乏しい華美な洋服を着込んだ女は、白い脚を颯爽と交互に動かしていた。くすんだピンク色のスカートは、同色のブラウス同様、新調したばかりのように皺がなく、黒いレースに縁どられた三段フリルが、彼女の歩みに合わせて揺れる。

 それだけなら、愛津は彼女を気にも留めなかっただろう。

 だが思わず、彼女が同じ歩道に出てきた時から愛津の胸中を占めた思いが、ついに口を突いて出た。


「ああいう髪、やってみたかったな……」


 つややかな黒髪を肩より短く切ったボブ。やや内巻きの毛先は、彼女の洋服と同じくらい、手入れが行き渡っていた。
 

「愛津ちゃんも可愛いよ。ああいうのしたかったの?」


 その時分、愛津は胸より長い黒髪を二つに分けて結っていた。目前の彼女との共通点は、黒髪だけ。

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