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ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪



「神倉さん、戻らないの……?」


 ヘアアイロンで巻き直したチェリーピンクの髪を下ろしたえみるは、これから外にでも出かけるほど、気合いの入った盛装だ。それにしても、まだ入籍していない恋人の母親を姑と呼ぶのは違う気もするが、えれんと拳を交えるつもりでいたにしては、Angelic Prettyから毎年出るイースターデザインのワンピースで儚く華やかな姿になった姫君は、家にこもらせておくのも惜しくなる。


「戻らないんだって。だから、デートでもどう?」

「えっ?!」

「えみるちゃん見てたら、連れ出したくなっちゃった……こういうの、綺麗な宝石を見せびらかしたくなる人の心理に近いのかな」


 いつか、えみるが織葉に話したことがある。人は利己的にしか生きられない。無償の愛を夢見て許されるのは、中学生までであると。


 彼女が織葉の手を取った時、また、LINEの通知音が鳴った。


"愛津ちゃんとお付き合いすることになったから、私の荷物、彼女のマンションに送ってきてもらうことは出来る?"


 えれんの文面の節々に、彼女の浮かれようが表れていた。

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