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ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪








 えれんが逮捕された同時期、彼女の地位をおびやかした男達も捕まっていた。往国茂樹、長沼そうま、そして川名有弘達だ。一時期、世間を騒がせた彼女のゴシップも、彼らが出どころだったらしい。

 その彼らも来月、複数回目の出産を予定している。

 愛津は、ざっと収容所の月間業務記録に目を通した。


「こうして気やすく話せるのも、今月が最後ね。愛津ちゃん。娘も成人して、愛津ちゃんに票を入れるんだと張り切ってるわ」

「有り難うございますと、お伝え下さい。あと、歳下ですし、今のままでお願いします」

「そう?党首に失礼じゃない?」

「私だって、人生の先輩に失礼は働きたくありません」


 ビシィィィィ…………ザシュッ……パァァァアアアンッッ──……

 ああっ。ああっ。

 あぐぅぅゥゥウウウ!!!…………


 僅かな沈黙を縫うようにして、地下階から地獄の気配が這い出してくるのが聞こえた。

 看守も囚人も、ここ数年で、右肩上がりに増加している。施設の増設も何度か検討されてきたが、愛津は保留を主張している。税金の用途に神経質な市民達への配慮が主な理由で、他には、女が釈放されるケースも出てきたからだ。一方で、男は十年赤子を産み続ければ、運良く精神を壊さなくても、心身ともに衰弱して、使い物にならなくなる可能性があるという。そうなれば、どこかの作業場にでも移送して、無賃労働させれば良い。

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