ジェンダー・ギャップ革命
第2章 唾を吐く貧民
「可愛いよ、やばい。待って、一緒に歩くの照れるかも」
「有り難うございます。照れるなら私の方です。織葉さんみたいな美人さんと歩けて」
「褒め合いになってるね、デートってこんな感じかな。それとも……」
ぎゅ。
織葉の手が愛津の手を、ごく自然な流れで握った。
彼女の指が、愛津の指と指の隙間を埋める。
「まだ時間ある?」
「はい」
「買い物に付き合ってくれない?」
それから愛津は織葉と手を組み繋いだまま、駅前のファッションビルに入った。
えみる達がよく着用している系統の店が多くを占める館内に、織葉がいつも着用している感じの店は見当たらない。
愛津がそうした場所に足を運んだのは、ほぼ初めてだった。昔、友人に付き合ったきりで、その時も一軒目ですぐに出た。
洋服を新調する意気込みでいた友人に申し訳なさを覚えながらも、当時、愛津は生きるだけで一杯だった。このブラウス一着で、二ヶ月分の光熱費は出せる──…そうした計算が頭を巡って、自分の生きている理由が急にぼやけて、辛くなった。