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ジェンダー・ギャップ革命

第2章 唾を吐く貧民



「助けて、愛津……お母さんもう耐えられない……貴女が帰ってくれば、貴女のために仕事出来る……」

「お父さんと別居してくれれば」

「難しいわ。貴女が大学に通っていた頃、一度、別れようって話したでしょ。おばあちゃんが私達だけなら受け入れると言ってくれて……、お父さん、何て言ったか覚えてる?俺の生活はどうなるんだ、って。信じられない、あの人、昔から自分のことしか考えていなくて」

「勝手に出てくれば良いじゃない。お母さんだけなら一緒に住んでも楽しいと思うよ、私」


 母親は難色を示すばかりだ。

 結婚した時も、彼女はこうして舅達の意図に従ったのだろう。彼らに異論を唱えていれば、今頃、彼女は大企業の重役くらいになっていた。


「仕事、戻るから。また連絡する」

「お願いね、考えてね。お母さん達を見捨てるような子じゃないって、愛津、貴女を信じてる」

「うん、……」

「いつ連絡出来る?今日?何時頃?本当にちゃんと考える?そんな薄情な娘に育てた覚えはないからね」…………



 あと十分あると言った自分に、激しい後悔を覚えていた。

 働かない父親が朝から晩までこもっている、狭いアパート。不平ばかり垂れ流している彼が、未だ一家の大黒柱の厚顔で、愛津達に指図だけはする家庭。プライベートな空間は、あってないのも同然だった。

 あすこに戻って、愛津に何の得があるのか。

 それで薄情呼ばわりされたくない。

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