ジェンダー・ギャップ革命
第2章 唾を吐く貧民
誰にでも優しい織葉のリップサービスが、もし少しでも本心であれば、と、最近よく愛津は願う。
初めて彼女が愛津を私的な外出に連れ出した時、憧れのボブに髪を変えた愛津に可愛いと言った。彼女から贈られた洋服で、怯えた捨て猫が極上のミルクを舐める時のようにびくびくと本部に出勤した時、永遠に眺めていたいと彼女は言った。
織葉から見て、愛津はどんな人間か。
少し苦労したことのある、可愛いものの似合う女?涙を拭ってやるだけの価値のある後輩?
現実は、愛津は地獄の生まれ育ちでしかない。
「織葉さん、私……弱くて……」
「愛津ちゃんのせいじゃないよ。頑張ったんだね。大変だったのに、愛津ちゃんが来てくれて、お義母様に付いてきてくれて、有り難う」
もう仕事に戻れると言った愛津を連れて、織葉が近くの公園へ場所を移した。数組の母娘連れが愛津達に視線を向けてきたのは、織葉の顔がそれだけ認知されているからだ。
ブランコの柵にもたれて、愛津は彼女のとりとめない話を聞かされたあと、ようやく鼻の奥のじんわりするのが落ち着いたのを自覚した。