ジェンダー・ギャップ革命
第3章 道理に適った少子化対策
「冗談……でしょう……?おい!わしは健康だ!手術なんか受けんぞ!」
「もなちゃん、おやじが偉そうな態度をとって、ごめん。俺はもなちゃんを尊敬してるし、はは、人為出産なんて、すごいね。天才としか言えないよ。もう一度やり直さないか?おやじとは縁を切る、こんなにすごいもなちゃんを、失いたくない……」
ペニスに印をつけられながら、情に訴えようと必死の元配偶者を、もなは清々しい気分で見下ろしていた。
彼はプログラマー、もなは二十代から才気を発揮した科学者だった。
二人は多忙なライフスタイルや深い探究心が、交際当初から共通していた。今でこそえれんの人懐っこさに感化されつつあるが、もなは人付き合いが不得手だった。研究室の仲間達が、もなに近付き難い人物のレッテルを貼っていた中、合コンに誘ってくる後輩もいた。彼女の誘いが、もなを初めての恋愛、結婚、離婚を経験するに至らしめた。
その彼と、もなには子供がいなかった。親族達、中でも舅と姑が、露骨なベビーハラスメントを行うようになった。
…──夜の生活はどうなの?排卵日、ちゃんと計算してるんでしょうね?もなさんは遺伝子の専門家かも知れないけれど、ご自分の身体はコントロール出来ないのね。
…──もなさんは、女性のくせして働きすぎではないですか。赤ん坊も窮屈で出てこれませんな。
彼らの念頭に、問題は息子にあるのではという可能性は、一切なかった。
嫁は家庭も顧みないで、男と同じ、否、男より働く変わり者。早朝に出勤する朝などは、良人を送り出しもしない鬼嫁。
もなが家事に手が回らなかったのも、彼らの嫁いびりの材料だった。