ジェンダー・ギャップ革命
第3章 道理に適った少子化対策
「久城さんは、救世主ですよ。ヤツらの産んだ赤ん坊は、子供を望む里親に送られる。同性や、妊活を断念した異性愛者のパートナー、独身で子供だけ欲しい人……望んで迎えられる子達は、きっと大切にされますね」
「将来的に、女児の出生率は上げたいところだけどね。男子は将来、苦労するじゃない」
「ですね。男は男であるだけで、犯罪ですし」
えみると同じ看守達が頷き合っていたところに、店員が次の料理を運んできた。飲み物の追加を頼んでおくよう、声がかかった。えみるも残りひと口程度に減っていたグラスを空にして、飲み放題コースのメニューに目を通す。
「えーっと……」
「苺の赤ワイン。えみるちゃん、好きだと思うわよ」
斜め後方から、今日初めて聞く声が注いできた。
えみるに代わって飲み物を追加注文したのは、遅れて合流してくることだけ聞かされていたえれんだ。
「お待ちしておりました、神倉様。お席はこちらでございます」
「神倉さん、いらっしゃーい、こっちこっちぃ」
恭しく椅子を引く店員と、早くも泥酔した研究員。彼女達に促されて着席したえれんが、さっきえみるの見ていたのと同じお品書きに目を通しながら、また別のメンバー達に、料理を取り分けた小皿を勧められている。
一同が注文を終えて、店員が立ち去っていった。と同時に、例のごとく不健全な話題を酒の肴にしていた党員達を、えれんが軽い調子で叱った。そんな彼女も、酒に飲まれるのは毎度、時間の問題だ。四十分経たない内に、今度はえみるが周囲に気を遣う羽目になる。