ジェンダー・ギャップ革命
第3章 道理に適った少子化対策
「彼がリストラされて、退職金で繋いでいます。貯金はローンの返済に切り崩していますし、住民税は免除していただけないか、申請しているところです」
「気の毒ですが、申請は通りません」
「本当ですか」
「木之内さんの配偶者さんは、男性ですよね。男性を降格または解雇して、主要ポストの八十%以上を女性に見直すか新規雇用した企業は、法人税が一部免除されます。そのため男性のリストラ率は、予め上昇が見込まれていました。救済制度はご利用になりましたか?」
「はい、職安に通っています。でも再就職が難しくて」
「そんなはずはありません。この付近で出ている求人だけでも、人手不足の会社が山ほどあります。配偶者さんは、本当に就職の意思をお持ちでしょうか」
もっとも、応募者の性別を問わない求人は、3Kだ。例外として、治験や身元不明の遺体処理、妊夫…──つまり有償の人為出産などがある。
どうでも良い。
それよりえみるは、もっと重要な想像に耽っていた。
木之内と名乗る女の指が、自身の身体に這ったとしたら、腰の奥がどれだけ疼くか。彼女の柔和な声を連れた熱い息が、直接肌に触れてきたら、えみるはきっと正気を失くす。