ジェンダー・ギャップ革命
第3章 道理に適った少子化対策
「えみるんが来ていたら、ヒステリー起こしてたんじゃないかな。今の重光も長沼派でしょ。長沼は、私の天敵でもあるけれど」
「神倉さん、よく十二年もあんな人の秘書を続けていたな。あいつが伊藤さんと仲良いなんて、おかしい」
「伊藤さんが良い人なだけでしょ。お父さんと引き合いに出して、どっちを支持するか……なんて、お年寄りは議論したがるけれど。女性の社会進出や、子供の教育に力を入れて、公で話す時だってご自分で原稿書いてる伊藤さんとお父さんとは、天地くらいの差があるよ。そもそもあんなの親じゃないし」
「容赦ないね。ま、私も往国議員達には迷惑したから、同感。ただ、結果的に男嫌いになれたのはあの人達のお陰だし、あの頃があったから神倉さんとも出逢えた。皮肉な話、良かったこともある」
愛津の斜め向かいで話しているのは、英真としづやだ。
えみると同い年の英真は、「清愛の輪」との関わりこそ、彼女より浅い。だがファッションの好みの一致から、打ち解けたのは早かった。英真より一つ年下で、彼女と同棲している恋人のしづやも同じだ。
従って、二人はえみるの事情を知っている。それは愛津も本人から聞かされたことがあって、えみるがえれんを支持したきっかけは至極単純、織葉の演説に救われたからだ。厳密には、彼女が当時直面していた問題に、えれんの理念が手を差し伸べた。