ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
性的少数者である限り、自由の利かないこともあるのだろう。性自認は男でも、女の格好で通勤・通学を余儀なくされたり、両親へのカミングアウトを失敗したり、婚姻届が認められなかった恋人同士が、市を訴えて難儀の末に入籍したりした例は、後を絶たない。
英真とて他人事ではなくなるかも知れない。
例えばの話、しづやと家族になれなければ、死んだあと私財を相続出来る人間もいない。
だがそうした問題ばかりに目を向けて、朝から晩まで悲観しているかと言えば、違う。英真の日常も楽観的だ。陽の当たる場所で、毎日笑って暮らしている。そして、やはり当時者でもない第三者の介入は、父とは真逆の場合であっても、理解者として受け入れられない。
かくて英真は、往国茂樹の失言があった一昨年の秋、しづやの住むマンションの部屋に居を移した。
ピアノや絵の講師は続けている。祖父母が別邸を貸してくれて場所には困らなかったし、もとより生徒達は、暇を持て余した令嬢ばかりだ。英真のカルチャースクールは、蓋を開ければ、羽目を外した社交サロンだった。