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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達


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 しづやの学生時分から暮らしてきた部屋は、深夜でも、洗濯機の回る音が壁を突き抜けてくる。それに夕方帰宅すると、大きな飲料水の段ボールを二人がかりで運び入れてくるカップルに、廊下で出くわすこともある。

 社会生活と家事を両立していないのは、英真としづやくらいではないか。

 朝にまとめた衣類やタオルは、夜には洗って畳まれていて、飲み水はもちろん、必要なものは全て補充されている。
 言わずもがな二人は共働きなのに、部屋は常に片付いていて、生花は世話が行き届いている。リビングには、手の込んだ夕餉。帰るといつでも出来立てが並んでいるから、英真はここに越してきた頃、佐々木が自分にGPSでも付けたのか、真剣に疑ったことさえあった。

 佐々木は、往国家の家政婦だ。

 来月五十歳の誕生日を迎える彼女は、英真が生まれてから二十五年間、ずっと世話をしてくれている。海外にいれば姫君の付き人になりたかったという彼女は、一人の女に生涯を捧げてみたいと夢見ているロマンチストで、英真が父親に愛想を尽かした一昨年、彼女も同行を願い出てきた。

 今夜も佐々木は、非の打ちどころなく仕事を終えていた。顔には疲れ一つ出ていない。

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