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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達



「お嬢様、しづや様、お帰りなさいませ。お暑かったでしょう、空調はこのくらいで問題ありませんか」

「有り難う。それより喉が渇いたわ」

「お茶のご用意もございます。何がよろしいですか」

「ラズベリーライチティー、ある?」

「少々お待ち下さいませ」

 
 英真と同じPINK HOUSEの洋服を好む彼女は、肌が白く目が大きく、その佇まいは、メイドカフェの給仕と呼んだ方がしっくりくる。シルバーピンクのミディアムの髪は、往国の監視下を離れたあと、英真が解禁させたものだ。くるぶしまであるピンク色のギンガムチェックのフリルを揺らして配膳する彼女の手際を見ていると、過剰装飾は動きにくいだの、派手な髪色は組織の秩序を乱すだのという世間に見られがちな見解が、つくづく根拠のない偏見だと痛感する。



 三人で食卓を囲ったあと、花びらが溶けるととろみの泡になる入浴剤を浮かべた浴槽に浸かって、英真は先に身体を洗うしづやに話しかけた。


「織葉さん、やっぱり若松さんによそよそしいね。呼び方も他人行儀だし、どう見たって神倉さんとの方が仲良い」

「神倉さんを手伝う時点で、そういうことでしょ。仕方ないよ。妹の方は実家暮らしさせているのに、産まれてすぐ神倉さんに親権渡したような母親に、心開く方がキツイ」

「それにしても織葉さんの大事な人って、誰なんだろ。本当に浮いた話聞かないし、……ねぇ、織葉さんが好きな人いたって言った時、愛津ちゃん顔色変わらなかった?」

「いつも通り仕事してたくない?外も中も騒がしくて、よく集中出来るなーって感心したくらい」

「うーん……気付かなかった人もいるのかぁ……」

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