ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
確かに愛津は、黙々とデスクに向かっていた。
ただ一瞬の例外に気付いたのが英真だけとすれば、彼女の装っていた無関心も、無駄ではなかったのだろう。
「しーづや」
一変して甘えた調子を含んだ英真に、しづやが秋波とも取れる目を向けた。
彼女の目は神秘的で、肩に触れる長さの毛先をすかした黒髪を洗う彼女の裸体は、こうして見ていると、まるで西洋絵画の天使だ。
「今日眠る?ちょっと遊ぶ?」
更けていく夜に搦め捕られるようにして、互いの身体にちょっかいをかけたり唇を合わせたりしながら、英真は彼女と入浴を終えた。脱衣室に出て、いよいよ濃密なキスが二人を淫らな酩酊に誘う。
髪が濡れたままでは風邪をひくと言いながら、英真はしづやの乳房に乗ったコットンパールを口に含んで、彼女は英真の太ももをまさぐる。
「はぁっ、はぁ……ぁっ、……」
「英真、エロい。っ、ん、ダメ、ドライヤー……ちゃんと、してっ……」
横目に触れる鏡の向こうで、類を見ない女の裸体がじゃれ合っていた。
いつかえみるに勧めた成人向け映像作品など比にもならない、女体の美も、野生的ないかがわしさも、彼女と自分の淫らごとに優るものがどこにあるのか。
街を歩けばそこそこ名の知れたアイドルかと誤解を招くことも珍しくない英真は、同じく自身の顔の良さを自覚しているしづやとは、すこぶる釣り合いがとれていると自負している。そして年頃の女の中でも、英真の淫らごとへの執着は、飛び抜けている。理性の外れた自分の姿を鏡に映して、より開放的な音を立てて恋人の指を一本一本しゃぶり出すような英真に、同じ動因で潤みに指を沈めてくるのもしづやくらいだ。