ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
英真をしづやに引き合わせたのは、百目鬼玲亜(どうめきれあ)だ。
カルチャースクールを開講したばかりの英真は、経済界の人脈とは離れたところからも生徒を募りたいと思い立った。そこで大学の同期だった玲亜に、誰か紹介してくれないかと頼んだ結果、彼女が連れてきたのがしづやだった。
英真はピアノを教えるより聴かせる方が得意だし、絵を描くのは不得手だ。だが知識は豊潤だった。しづやは英真の社交サロンに、演奏、講義を聞きに通ってきた。
ある講義──…とは名ばかりの、英真が遊び相手を物色するための女子会の日、いつものように演奏をして、往国家に所蔵している新旧の古美術や天然石の彫刻を披露したあとで、英真としづやの二人だけが広間に残った。他の令嬢達は好き好きに、ニ、三人の組に分かれて、英真に権限のある別の個室に入っていった。
「私達が残されるなんて……。渡島さん、私、今日のメイクおかしいかな?」
当時の英真は、しづやに対してまだ他人行儀だった。
英真が鏡を確かめたのも、無理はなかった。裸婦が主題の西洋美術の模倣品を主に鑑賞していたあのあと、一同は同じ衝動を催した。
しづやは一般家庭の出身でも、箱入り娘達の人気を得ていたし、英真も快楽における想像力で、彼女達を飽きさせなかった。
だのに二人は、腰の奥の疼きを慰めるための相手として、令嬢達に選ばれなかった。