ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
「神倉えれんとは、まだ繋がってる?」
一度は見たことのあるキャラクターがガラスケースに隙間なく積まれたクレーンゲームを操作しながら、玲亜が話頭を転じた。
三人、さっきから声を張り上げながら、ゲームセンターの快適な空調を離れ難く、誰も場所を変えようとは提案しない。
英真が頷くと、やはり天気の話でもしている調子で、玲亜が続けた。
「ま、あたしには関係ない。ノンケの風当たりが強くなったのは、神倉えれんの独裁のせい……そんな声も上がってるけど、神様みたいな政治家なんていない。神倉さんが出てこなかったら、それはそれで、もっとやばい人が政権取っていただろうし」
「ひと昔前の少子化対策、暴走気味でしたもんね。私も社会の方面は、興味ありません。神倉さん全肯定でもありません。英真を連れ戻そうと押しかけてきた往国さんや、彼女の求婚者が手に負えなくなって、フェミニストな神倉さんに泣きつくしかなかっただけです」
「あったねー、英真が家出してしばらく。今は大丈夫?家知られてるでしょ?」
「収容所が出来てから、落ち着きました。往国さんは諦めたみたいで、求婚者達は、下手に動けば牢獄行きです」
ぬいぐるみは、結局、少し傾いただけだ。そろそろアームの強まる周期だろうが、互いに無言で飽きたという意見を合わせて、金色の日差しが燦々と注ぐ路上に出た。
「暑っ」
玲亜が手で首元を仰ぐ仕草をしてみせた時、英真は大して暑くもないと思った。
露出の高い格好をして、日傘やタオルを片手に、ぞろぞろと歩く。それは、一種の自由の象徴だ。休暇を利用して、好んで炎天下の人混みに出向く。そして「暑い」と口にする。平凡な日常にいなければ出来ない。
それから英真達は移動先まで、ある居酒屋のオーナーの話を聞かされた。
英真からすれば、真顔で男への好意を語る親友も奇天烈だが、それより印象深かったのは、大企業ならともかく、未だ都心に男の経営者がいたことだ。