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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達


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 新涼が秋気を深める頃、婚姻届の却下される事例が相次いだ。

 原因は、新制度の導入だ。

 市町村が、結婚を希望したカップルを審査する。収入、経歴、家庭環境、他にも心身のチェックリストなどを基準に、両者がパートナーとなるに相応しいか判断するというものだ。そこで、例えば一方が税金未納者や前科持ちであった場合、その人物は相手に不利をもたらすとして、役所が婚姻届を受理しない。


 えれんの提案した審査制度は、満場一致で可決した。

 というのも、彼女が重光の秘書を務めていた頃、彼らの制定した子育て支援や異性愛者のみを対象とした結婚給付金は、未だ機能している。そのため、給付金目当ての家同士が互いの子供を結婚させたり、女と男の友人同士が副業の感覚で婚姻届を出したりする事案が多発していた。今は久城の開発した技術もあって、日頃、彼女を目の敵にしている年寄り達がこの案に限って賛同したのは、国家予算を切りつめるという魂胆が根拠だろうが、新制度は本人の望まない結婚や家庭内暴力を減少させた反面、他意ないカップル達に不利を招いた。

 市民達の投書を募ったアカウントを開くと、今朝も数組の若者達から、恨み言が届いていた。

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