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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達



「愛津は仕事楽しそうで良いね、ひろかも見てると辛くなるほどだって言ってたよ」

「ひろかが?」

「ここだけの話、専業主婦は過酷労働だって。……愛津。神倉さんが救ってるのは、ひと握りの女性だけ。減税されても、私達みたいに元の収入が低いと節約しても厳しいし、男が奴隷になったなんて、メディアが面白おかしく騒いでいるだけ。ひろかは、少子化対策の給付金目当てで、親に結婚させられたんだよ。家事や育児を丸投げする良人を、どこにも訴えられないでいる。それでも私は、そろそろ結婚を考えてる。ボーナス出なくて給料も安いのに、しょっちゅう上司に怒鳴られて、お局さんには嫌味言われて……」



 目に見える全てが張りぼてにでもなった気がした。

 あの時、愛津が久し振りに会った旧友は、有名なブランドのモノグラムが全面を覆うバッグを持って、洒落たドリンクのストローをつまむ指先は、美しく装飾されていた。
 かくいう愛津も、彼女と同じケーキセットを頼んで、つい最近えみる達とボーナスを散財した洋服や化粧品でめかしこんでいた。大学を中退した時分の話など、友人の方も忘れていた。


 自身を幸福に見せること、それは下着をつけるより簡単で、人が人と関わる上で、強制された作法か。

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