ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
「えれんちゃん、いい加減、種明かしして頂戴よ。織葉ちゃんとお似合いの母娘じゃないか。えれんちゃんが産んだんだろ?なんて言ったって、君は安産型の良い腰だもんなぁ。織葉ちゃんみたいな美人が産まれるのも納得いくよ」
あの白髪混じりの頭の男は、そう言って、私的な晩餐の場で、えれんの腰の線をなぞった。
織葉の養父は、しがない公務員だった。議員に不快な顔を向けられるほど据わった肝の持ち合わせもなく、配偶者が笑顔をひきつらせても、下を向いて酒を飲んでいた。
あの晩餐の数日後、織葉は飲食店に向けた新製品のチラシを持って、例のごとく外回りに出ていた。営業準備中の看板の出ていた居酒屋に入って、口が覚えている通りのセールス文句を並べた織葉に、オーナーが一品料理を出してきた。
お疲れ様。俺からも営業させて下さい。気に入ってもらえたら、今度、お友達も連れてきてもらえます?
彼から他意は感じなかった。立ち上げたばかりの店にはまだ常連もいなかったらしく、そこに営業をかけてきた女を相手に、彼も彼の仕事をしただけだった。
後日、織葉は会社の同僚を連れて、彼…──斎藤こうきの居酒屋へ行った。
以後、週末になるとそこで夕餉にするようになった織葉は、彼の店のめざましいほどの発展を、六年に亘って見ることになった。いつしか評判は広まって、彼が通りすがりの人間に無償で料理を振る舞う必要もなくなった。