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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達


 人当たりの良い笑顔、清潔感のある黒髪は、浅く焼けた肌を実際より白く見せて、その体格は、朝から晩まで厨房とカウンターを往復している人間にしては、健康的に鍛えられている。

 最後に見た時と変わらない。

 織葉と同い年の斎藤は、出逢った頃、少年の名残りが強かった。それから六年、円熟していた彼は、更に四年、三十代相応の男になっていた。一方で彼の明るさは、織葉が親しみを覚えるほどには、時の経過を忘れさせる。


「っ、……失礼します」


「待って、織葉ちゃんじゃない?!」


 ごつごつした手が、長らく女の繊手にのみ親しんでいた織葉を掴んだ。


「あ、ごめん」


 反射的に離れた手が、織葉の腕に、皮下の骨太まで感じさせる力強さの余韻を残した。


 斎藤が出前箱から料理を出していく側で、英真としづやが狐につままれたような顔を浮かべていた。

 彼女らに、織葉はどう説明すべきか思案する。

 昔の友人。店主と常連。

 いくらでも回答はあるのに、どれもしっくりこない。


「結婚……頑張って、百目鬼さんと。おめでとう」

「織葉ちゃん、ごめん、そんなつもりじゃなくて……っ」



 今度こそ事務所を飛び出して、階段を降りた。後方に足音が重なってきたのは、すぐあとだ。誰かの声が織葉を呼んだ。

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