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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達




 男達が連行されて、英真としづやも事情聴取を受けたあと、三人で部屋に戻った。

 明るい場所でしづやを見ると、目も当てられなかった。日頃は書類で指を切る程度の怪我しかしない彼女の腕に、青黒い痣まで見られると、英真の煮えくり返ったはらわたに、またじりじりと熱が戻る。

 佐々木が彼女に塗布する薬の匂いの中で、英真は玲亜との飲み会の一部終始を、同居人達に報告した。


「とにかく良かった、婚姻届が受理されて。織葉さん、意外と感情で動く人だったんだな。助かった」

「本当にね。式も挙げるみたいだし。男と挙式なんて理解出来ないけど、ちょっと羨ましい。結婚って、親の許可なくても出来るかな?」

「したいの?」

「今の私、居候みたいなものじゃない。その……私達の場合、したからってそんなに変わらないだろうけど、遠い将来のこと考えると、して損はないかと。それにいくら私が往国の娘でも、配偶者持ちならつきまとえないでしょ」


 佐々木の潤沢した目が、英真としづやを交互に見ていた。まるでロマンチストな思春期の少女のそれだ。しづやは瞠目して英真を見るだけで、英真も一つとして本心を言葉に出せていないのに。


 法や社会など、英真にはとるに足りない問題だ。ただ社会の一員らしく、愛する人との誓いの書類に判を捺して、彼女と家族と呼び合いたい。更に望めば、盛大な祝福に包まれて、互いに選んだドレスを着て、神の前で永遠を誓って、口づけして、一生分、惚気たい。英真だけの得る幸福を、見せびらかしたい。

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