蜜会…春の揺れ
第1章 春の揺れ
10
「………………」
知らない街の…
歩道の片隅で…
わたしは―――
春晴れの、青空を仰ぎ…
声無き叫びを上げていく。
できるなら、このまま逃げたい――
「………………」
この知らない街の、雑踏に紛れ…
消えて、居なくなりたい――
「…あ、あのぉ、大丈夫ですか?」
通りかかった男性が、優しく声を掛けてくれてきた。
「……あ…は、はい…だ、大丈夫です……」
「なら、良かった」
「あ、ありがとう…ございます……」
わたしは、その親切な男性の後ろ姿を見つめ…
『ねえ、わたしを、何処かに連れてってよ』
だが…
声には、出せない。
逃げられない現実が、重くのしかかる――
胸が苦しい…
けど、涙は出ない。
「ふぅぅ………」
わたしは、震える膝に力を込め、現実の重さに抗い、立ち…
空を見上げ、吐息を漏らす。
春の空気が、重かった――
ブー、ブー、ブー………
「あ…」
再び、握りしめていたスマホが震える。
「は、はい、もしもし、颯太っ」
「午後から、仕事が抜け出せそうなんだ…」
「え…」
「たださ…」
「うん」
「17時過ぎには戻らなくちゃならないんだけどさ…」
心が揺らぎ…
「………う、うん…」
「なんか、美春が心配でさ…」
心に霞みが…
ううん、それは、灰色の湿った霧…
「…うん…逢いたい………」
「そ、そうか…」
「すぐに、逢いたいの」
「あ、でも、時間は…」
「うん…わたしも………」
スマホを握る、左手に、力がこもる。
「うん、わたしもね…18時から予定あるから…」
心の中で…
湿った霧が、ゆっくりと、流れ、渦を巻きはじめてくる…
逃げられないのなら…
もがき、泳ぐしかない―――
「………………」
知らない街の…
歩道の片隅で…
わたしは―――
春晴れの、青空を仰ぎ…
声無き叫びを上げていく。
できるなら、このまま逃げたい――
「………………」
この知らない街の、雑踏に紛れ…
消えて、居なくなりたい――
「…あ、あのぉ、大丈夫ですか?」
通りかかった男性が、優しく声を掛けてくれてきた。
「……あ…は、はい…だ、大丈夫です……」
「なら、良かった」
「あ、ありがとう…ございます……」
わたしは、その親切な男性の後ろ姿を見つめ…
『ねえ、わたしを、何処かに連れてってよ』
だが…
声には、出せない。
逃げられない現実が、重くのしかかる――
胸が苦しい…
けど、涙は出ない。
「ふぅぅ………」
わたしは、震える膝に力を込め、現実の重さに抗い、立ち…
空を見上げ、吐息を漏らす。
春の空気が、重かった――
ブー、ブー、ブー………
「あ…」
再び、握りしめていたスマホが震える。
「は、はい、もしもし、颯太っ」
「午後から、仕事が抜け出せそうなんだ…」
「え…」
「たださ…」
「うん」
「17時過ぎには戻らなくちゃならないんだけどさ…」
心が揺らぎ…
「………う、うん…」
「なんか、美春が心配でさ…」
心に霞みが…
ううん、それは、灰色の湿った霧…
「…うん…逢いたい………」
「そ、そうか…」
「すぐに、逢いたいの」
「あ、でも、時間は…」
「うん…わたしも………」
スマホを握る、左手に、力がこもる。
「うん、わたしもね…18時から予定あるから…」
心の中で…
湿った霧が、ゆっくりと、流れ、渦を巻きはじめてくる…
逃げられないのなら…
もがき、泳ぐしかない―――
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