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夢のうた~花のように風のように生きて~

第4章 運命の邂逅

「徳松さん―」
 熱いものが込み上げてくる。しかし、この涙は定市の仕打ちの数々に対して流したものとは異なり、嬉し涙であった。
 こんな男も広い世の中にはいるのだろうか。見返りも下心もなく、大らかな心で包み込んでくれる春の陽だまりのような男もちゃんといるのだ。
 お千香の頬を涙の雫がつうっと流れ落ちた。
「あれ、俺、何か泣かせるようなことを言っちまったっけ」
 徳松が素っ頓狂な声を上げた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 泣くまいと思っても、涙は止まりそうにない。徳松が慌てる傍で、お千香は嬉し涙を零した。

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