
夢のうた~花のように風のように生きて~
第4章 運命の邂逅
お千香は無意識の中に後ずさった。
何故、定市がここに? お千香がここにいることを知ったのだろうか。
お千香の顔に怯えの表情が浮かんだ。
真っすぐ無表情に見据えてくる定市の眼を怖いと思った。
「お千香、随分と探したんだぞ? さあ、一緒に帰るんだ」
手を強く引かれ、お千香は烈しく首を振った。
「い、いや。いやです。私はもう美濃屋には帰りません」
全力で逆らってみても、逞しい定市には到底叶わない。ずるずると引きずれられるような形になり、お千香は悲鳴を上げた。
「止めて、私はもうあそこには帰らないと決めたんです」
定市が烈しい眼でお千香を睨んだ。
「お前、私からは逃げ出したくせに、他の男になら抱かれるっていうのか?」
冷たい眼、乾いた声。何もかもが定市の憤りを表しており、お千香はそれが怖くてたまらなかった。
「違います、徳松さんは、そんな男(ひと)じゃありません」
それでも勇気をかき集めて言った。自分だけなら良い、徳松までをも侮辱されるのは許せない。
「私はお前を許さねえ。これから帰って、その身体に自分がどれほどのことをしでかしたのか思い知らせてやる」
定市が憎々しげに言った時、背後で叫び声が上がった。
「止めろッ」
徳松が仕事道具の入った大切な道具箱を放り出して、定市に飛びかかった。
「お千香ちゃんは嫌がってるじゃねえか」
徳松の中に言いしれぬ怒りが湧いた。
―こいつが、この男がお千香ちゃんを手込めにした恥知らずなのか!
生娘をあれほどまでにいたぶり、さんざん慰みものにした男なのか。
弾みで定市がお千香の手を放し、その隙にお千香は急いで逃れた。
「待て」
定市がもの凄い形相でお千香を追いかけようとするのを、徳松は両手をひろげてその前にたちはだかった。
「これ以上、お千香ちゃんを苦しめるのは止めてくれねえか」
徳松の言葉には懇願するような響きがある。
何故、定市がここに? お千香がここにいることを知ったのだろうか。
お千香の顔に怯えの表情が浮かんだ。
真っすぐ無表情に見据えてくる定市の眼を怖いと思った。
「お千香、随分と探したんだぞ? さあ、一緒に帰るんだ」
手を強く引かれ、お千香は烈しく首を振った。
「い、いや。いやです。私はもう美濃屋には帰りません」
全力で逆らってみても、逞しい定市には到底叶わない。ずるずると引きずれられるような形になり、お千香は悲鳴を上げた。
「止めて、私はもうあそこには帰らないと決めたんです」
定市が烈しい眼でお千香を睨んだ。
「お前、私からは逃げ出したくせに、他の男になら抱かれるっていうのか?」
冷たい眼、乾いた声。何もかもが定市の憤りを表しており、お千香はそれが怖くてたまらなかった。
「違います、徳松さんは、そんな男(ひと)じゃありません」
それでも勇気をかき集めて言った。自分だけなら良い、徳松までをも侮辱されるのは許せない。
「私はお前を許さねえ。これから帰って、その身体に自分がどれほどのことをしでかしたのか思い知らせてやる」
定市が憎々しげに言った時、背後で叫び声が上がった。
「止めろッ」
徳松が仕事道具の入った大切な道具箱を放り出して、定市に飛びかかった。
「お千香ちゃんは嫌がってるじゃねえか」
徳松の中に言いしれぬ怒りが湧いた。
―こいつが、この男がお千香ちゃんを手込めにした恥知らずなのか!
生娘をあれほどまでにいたぶり、さんざん慰みものにした男なのか。
弾みで定市がお千香の手を放し、その隙にお千香は急いで逃れた。
「待て」
定市がもの凄い形相でお千香を追いかけようとするのを、徳松は両手をひろげてその前にたちはだかった。
「これ以上、お千香ちゃんを苦しめるのは止めてくれねえか」
徳松の言葉には懇願するような響きがある。
