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夢のうた~花のように風のように生きて~

第5章 花塵(かじん)

 その時、突如として一陣の風が吹き抜け、おみつの手からばらばらになった手紙の断片を奪い去っていった。
 それは、あたかも花びらが風に舞い踊るように、ひらひらと風に巻き上げられ、空の彼方へと運ばれて消えた。
―おみつ。
 ふいに背後でお千香の声を聞いたような気がして、おみつは振り返った。
 もちろん、誰もいるはずはない。ただ、お千香がありしときのまま、文机の上には硯や文箱、筆がきちんと整頓されて置いてある。
 お千香はよくこの文机に向かって書き物をしていたものだった。
 何を書いているのかと一度訊ねたら、恥ずかしそうに隠してしまった。
 その少し後で、あれは恋の唄を書き付けていたのだと照れくさそうな顔で教えてくれた。
 お千香が幼い頃、おみつが子守唄代わりに歌った唄だという。

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