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胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】

第9章 驟雨

「良かった」
 心からの安堵の滲んだ声に、ふと顔を上げると、泰雅が静かに見下ろしていた。
 恐る恐る見上げてみても、その端整すぎるほど整った顔には、怒りは微塵もなかった。泰雅はただ静かに微笑んでいるだけであった。
「お前が無事で本当に良かった」
 泰雅が泉水の髪に顔を埋める。
 もう一度強く抱きしめられ、泉水は良人の懐で幾度も頷いた。

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