胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第9章 驟雨
泉水は肩を小さくすくめた。
「とんでもない、流石にもう懲りた。当分は屋敷で大人しうしておるつもりじゃ」
それは本音であった。泰雅や時橋、それに他の者たちにも多大な心配や迷惑をかけてしまった。
だが、時橋にとっては、この応えは素直に歓べぬものだったようだ。
「まあ、当分では困ります。今後はずっと大人しうして頂かねば、私は幾つ身があっても足りませぬ」
その言葉に、泉水は声を立てて笑った。
「ま、何がおかしうて、そのようにお笑いになられるのでございましょう。ほんにお方さまはこの時橋の心もお知りにならず―」
長々と続きそうな説教に、泉水は小さく溜息を零す。むろん、時橋に気付かれないようにだ。
初秋の風が身の傍を通り過ぎていった。
庭の睡蓮の蕾が揺れている。
お転婆姫の帰還で、榊原の屋敷はまた、いつもの賑やかさを取り戻したようだ。
( ご覧頂きまして、ありがとうござます。〝蝶の見た夢〟は、明日からは第4話に入ります。第4話では、泉水の亡き許婚者裕次郎が突然、泉水の前に?
混乱するお転婆姫の心は-。)
「とんでもない、流石にもう懲りた。当分は屋敷で大人しうしておるつもりじゃ」
それは本音であった。泰雅や時橋、それに他の者たちにも多大な心配や迷惑をかけてしまった。
だが、時橋にとっては、この応えは素直に歓べぬものだったようだ。
「まあ、当分では困ります。今後はずっと大人しうして頂かねば、私は幾つ身があっても足りませぬ」
その言葉に、泉水は声を立てて笑った。
「ま、何がおかしうて、そのようにお笑いになられるのでございましょう。ほんにお方さまはこの時橋の心もお知りにならず―」
長々と続きそうな説教に、泉水は小さく溜息を零す。むろん、時橋に気付かれないようにだ。
初秋の風が身の傍を通り過ぎていった。
庭の睡蓮の蕾が揺れている。
お転婆姫の帰還で、榊原の屋敷はまた、いつもの賑やかさを取り戻したようだ。
( ご覧頂きまして、ありがとうござます。〝蝶の見た夢〟は、明日からは第4話に入ります。第4話では、泉水の亡き許婚者裕次郎が突然、泉水の前に?
混乱するお転婆姫の心は-。)