
胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第14章 夢を売る男
「良いって、良いって。これでも夢五郎の売る夢札はよく当たるって、評判なんだぜ。悪いことは言わない、ここは、ありがたく貰っときなって」
夢五郎と名乗った男は、懐から何枚かの木札を取り出した。
「さ、姐さん。ここから一つ、取り出してみなよ」
泉水は躊躇いながらも、おずおずと手を伸ばした。
「それで良いんだね」
夢五郎は念を押すように問い、泉水の手にした札をさっと引き抜いた。
「ホウ、こいつは愕いた」
大仰な愕きぶりを見せ、泉水の選んだ木札を食い入るように眺める。
「あの―、その札に何か書いてあるの?」
泉水が恐る恐る訊ねると、夢吉は薄く笑った。
「これは、藤の札だね」
「藤の札?」
夢吉は小さな札を泉水の前に掲げた。
「良いかい、ここをご覧。絵が描いてあるだろう。この絵が姐さんのこれから見る夢を暗示してるんだよ」
「これから見る夢を暗示する―、それは、どういうことなの。私がこの札に描かれている絵と同じ夢を見るってことなのかしら」
「それは、私にも判らないね。要するに夢札っていうのは、この木札のことで、この裏に描かれている絵が重要なんだ。その人が選んだ札の夢を見ることができるという言い伝えがあるのさ。それが正真正銘、本物の夢なのか、それとも未来を意味するのかは判らない。人によっては単に眠ってるときに見る夢だけのこともあるし、また別の人であれば、この絵に描かれたとおりの未来を手にしたという話も聞くからね。つまり、人それぞれってこと。大切なのは、この札の絵が姐さんにとって何か重大な意味を持つ、もしくは深く拘わってくるってことかもね」
「判ったわ。この絵に気を付けていれば良いのね」
泉水が上目遣いに夢五郎を見る。どうも、いまいち信用できない胡乱な男ではあったが、不思議と憎めない。それに、夢札に描かれた絵と同じ夢を見るという夢五郎の言葉が、何故か泉水の心に強く残った。
「それよりも、この手を放して」
夢五郎と名乗った男は、懐から何枚かの木札を取り出した。
「さ、姐さん。ここから一つ、取り出してみなよ」
泉水は躊躇いながらも、おずおずと手を伸ばした。
「それで良いんだね」
夢五郎は念を押すように問い、泉水の手にした札をさっと引き抜いた。
「ホウ、こいつは愕いた」
大仰な愕きぶりを見せ、泉水の選んだ木札を食い入るように眺める。
「あの―、その札に何か書いてあるの?」
泉水が恐る恐る訊ねると、夢吉は薄く笑った。
「これは、藤の札だね」
「藤の札?」
夢吉は小さな札を泉水の前に掲げた。
「良いかい、ここをご覧。絵が描いてあるだろう。この絵が姐さんのこれから見る夢を暗示してるんだよ」
「これから見る夢を暗示する―、それは、どういうことなの。私がこの札に描かれている絵と同じ夢を見るってことなのかしら」
「それは、私にも判らないね。要するに夢札っていうのは、この木札のことで、この裏に描かれている絵が重要なんだ。その人が選んだ札の夢を見ることができるという言い伝えがあるのさ。それが正真正銘、本物の夢なのか、それとも未来を意味するのかは判らない。人によっては単に眠ってるときに見る夢だけのこともあるし、また別の人であれば、この絵に描かれたとおりの未来を手にしたという話も聞くからね。つまり、人それぞれってこと。大切なのは、この札の絵が姐さんにとって何か重大な意味を持つ、もしくは深く拘わってくるってことかもね」
「判ったわ。この絵に気を付けていれば良いのね」
泉水が上目遣いに夢五郎を見る。どうも、いまいち信用できない胡乱な男ではあったが、不思議と憎めない。それに、夢札に描かれた絵と同じ夢を見るという夢五郎の言葉が、何故か泉水の心に強く残った。
「それよりも、この手を放して」
