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胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】

第1章 《槇野のお転婆姫》

 たった今別れたばかりだというのに、もう次に逢うことを考え始めている。
 そう思っただけで、切なさが込み上げてきて、泣けてくる。男にも言ったとおり、自分はこんな泣き虫でも弱虫でもなかったはずだ。時橋でさえ呆れるほど、気の強い男勝りの姫だった。それなのに、あの男を知ったその日から、泉水はすっかり変わってしまった。そんな自分を泉水自身ですら持て余している。
 泉水は次第に暮れなずんでゆく春景色の中にひっそりと佇み続けた。たった今まで男と共にいたこの場所から離れたくなかった。溢れる涙が絶えることなく頬を濡らす。

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