胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第15章 真(まこと)
「いや、そいつは嘘じゃねえ。姐さん、実は私は異性よりも、同類の方が好きでねえ。相手にするのは、これまでは皆、若くて、とびきりきれいな男の子だけって決めてたんだよ。でも、姐さんのような、ちょっと見には男にしか見えない―いや、もとい、凛々しい若衆姿の娘っていうのもなかなか新鮮で良いなと思ってねえ。何か妙にそそられる色気があるんだ」
「―」
泉水は絶句した。やっぱり、絶対にこの男、おかしい。
その時、泉水の中で閃くものがあった。
「ねえ、夢五郎さん。冗談はそれくらいにして、訊きたいことがあるの」
「いやー、今のは冗談なんかじゃないよ。本気も本気、何たって、姐さんは、私を女性に目覚めてさせてくれた恩人でもあり、初恋の女(ひと)でもあるんだからね。冗談なんて思われちゃア、哀しいなぁ」
全く、どこまで本気で、どこまで冗談なのか判らない。でも、こんなところは、やはり泰雅に少し似ているような気もする。
いやだ、いやだ。大好きな泰雅がこんな男色の陰間のなれの果てのような男に似ているだなんて、考えたくもない。一瞬浮かんだ嫌な考えを慌てて振り払い、泉水は夢五郎の戯言は聞かぬふりをする。
「あなたの夢札がよく当たるっていうのは、満更嘘じゃないかもしれない。私は今、そう思ってるの。ね、もう一枚だけ、私に夢札を売ってくれないかしら。もちろん、今度はちゃんとお代はお支払いします」
図らずも、夢五郎から貰った夢札は、ある意味で真実を言い当てていたともいえる。夢五郎に出逢う前から、夜毎見ていた奇妙な夢。闇の中で泣いていた女の子は、おつやそっくりだった。
そして、夢五郎の夢札には、咲き誇る藤の花と幸せそうに寄り添う親子の姿。その中の小さな女の子は、どこか、おつやに似ていた―。
漸く訪ね当てたおはるの住まいには、内職の紙細工の花が咲いていた。その花は、薄紫と白のふた色の藤の花だった。
偶然かもしれない。すべてが巧妙に仕組まれた必然のように思えるだけで、実は単なる偶然の積み重ねだけなのかもしれない。
しかし、泉水には、確かに夢札が何かを語ろうとしていたように思えてならなかった。
「―」
泉水は絶句した。やっぱり、絶対にこの男、おかしい。
その時、泉水の中で閃くものがあった。
「ねえ、夢五郎さん。冗談はそれくらいにして、訊きたいことがあるの」
「いやー、今のは冗談なんかじゃないよ。本気も本気、何たって、姐さんは、私を女性に目覚めてさせてくれた恩人でもあり、初恋の女(ひと)でもあるんだからね。冗談なんて思われちゃア、哀しいなぁ」
全く、どこまで本気で、どこまで冗談なのか判らない。でも、こんなところは、やはり泰雅に少し似ているような気もする。
いやだ、いやだ。大好きな泰雅がこんな男色の陰間のなれの果てのような男に似ているだなんて、考えたくもない。一瞬浮かんだ嫌な考えを慌てて振り払い、泉水は夢五郎の戯言は聞かぬふりをする。
「あなたの夢札がよく当たるっていうのは、満更嘘じゃないかもしれない。私は今、そう思ってるの。ね、もう一枚だけ、私に夢札を売ってくれないかしら。もちろん、今度はちゃんとお代はお支払いします」
図らずも、夢五郎から貰った夢札は、ある意味で真実を言い当てていたともいえる。夢五郎に出逢う前から、夜毎見ていた奇妙な夢。闇の中で泣いていた女の子は、おつやそっくりだった。
そして、夢五郎の夢札には、咲き誇る藤の花と幸せそうに寄り添う親子の姿。その中の小さな女の子は、どこか、おつやに似ていた―。
漸く訪ね当てたおはるの住まいには、内職の紙細工の花が咲いていた。その花は、薄紫と白のふた色の藤の花だった。
偶然かもしれない。すべてが巧妙に仕組まれた必然のように思えるだけで、実は単なる偶然の積み重ねだけなのかもしれない。
しかし、泉水には、確かに夢札が何かを語ろうとしていたように思えてならなかった。