胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第2章 《戸惑う心》
「姫さま、どうなさいました? 急にお姿が見えなくなってしまわれて、随分とお探し申し上げたのですよ」
泉水は時橋に取りすがって、泣きじゃくった。
「何かおありになったのですか」
生まれたときからずっと側にいる乳母は流石に何かを感じたらしい。
泉水は涙をぬぐいながら、小さくかぶりを振った。
「大丈夫、何でもない」
「さりながら、そのお顔、涙でびしょ濡れ、まるで童のようでございますよ?」
いつものように少し叱るような口調が今はかえって懐かしくホッとする。
「心配をかけて済まなかった。許して」
泉水はそう言うと、時橋と視線を合わせようともせず奥の部屋にこもった。
何故か無性に眠りたかった。眠れば、何もかも忘れられる。あの男のことも、生まれて初めて知った恋の相手が実は良人であったことも。
「疲れたゆえ、少し寝みたい」
ひと言だけ言うと、時橋が急いで腰元にのべさせた夜具に入り、ほどなく眠りに落ちた。
泉水は時橋に取りすがって、泣きじゃくった。
「何かおありになったのですか」
生まれたときからずっと側にいる乳母は流石に何かを感じたらしい。
泉水は涙をぬぐいながら、小さくかぶりを振った。
「大丈夫、何でもない」
「さりながら、そのお顔、涙でびしょ濡れ、まるで童のようでございますよ?」
いつものように少し叱るような口調が今はかえって懐かしくホッとする。
「心配をかけて済まなかった。許して」
泉水はそう言うと、時橋と視線を合わせようともせず奥の部屋にこもった。
何故か無性に眠りたかった。眠れば、何もかも忘れられる。あの男のことも、生まれて初めて知った恋の相手が実は良人であったことも。
「疲れたゆえ、少し寝みたい」
ひと言だけ言うと、時橋が急いで腰元にのべさせた夜具に入り、ほどなく眠りに落ちた。