胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第22章 散紅葉(ちるもみじ)
寄る辺のない娘が一人、どこへ行くというのか。
篤次は、追いつめられ、またしても、ゆき場を失った泉水が哀れでならなかった。
そういえば、泉水がよくこの樹の下に座って坂道の向こうを眺めていたことを今更ながらに思い出す。そのときの彼女は、いつも淋しげな眼をしていた。
あの娘は道の先に何を見つめていたのだろうか。
あの哀しげな瞳が今も篤次の瞼に灼きついて離れない。
恐らく泉水は、もう二度とここへは戻ってこないつもりだろう。何の確信もあるわけではないのに、篤次はそんな気がしてならなかった。
霜月もそろそろ下旬に差しかかろうとしている。
日中とはいえ、寒風が身に滲みる。
ミャーと、くろの鳴き声が哀しげに響いた。
(★ ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
明日から第8話に入ります )
篤次は、追いつめられ、またしても、ゆき場を失った泉水が哀れでならなかった。
そういえば、泉水がよくこの樹の下に座って坂道の向こうを眺めていたことを今更ながらに思い出す。そのときの彼女は、いつも淋しげな眼をしていた。
あの娘は道の先に何を見つめていたのだろうか。
あの哀しげな瞳が今も篤次の瞼に灼きついて離れない。
恐らく泉水は、もう二度とここへは戻ってこないつもりだろう。何の確信もあるわけではないのに、篤次はそんな気がしてならなかった。
霜月もそろそろ下旬に差しかかろうとしている。
日中とはいえ、寒風が身に滲みる。
ミャーと、くろの鳴き声が哀しげに響いた。
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