
胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第24章 再会
泉水の話に夢五郎はじっと聞き入っていた。
「そんなことは気にすることはねえさ」
ややあって、夢五郎が言った。
え、と、泉水が弾かれたように顔を上げる。
視線が交わった夢五郎がニッと笑った。
「姐さんはそれが嫌なんだろ? それで、家を飛び出しちまったんだろう。姐さんには姐さんの考え方、感じ方がある。それは仕方のないことだし、他人から変えろと言われても、土台変えられるもんじゃねえ。人にはその人らしく生きることのできる権利ってものがある。我が儘を通すとかいうんじゃなくて、その人が人間らしく生きられる最低限の権利とでもいうのかな。悪いが、姐さんの旦那―元旦那か? そいつは、姐さんの気持ちを端から少しも理解してやろうとはしてねえじゃないか。男なら、ちったア、手前の気持ちだけを相手に押しつけるんじゃなくて、惚れた女の心を思いやるってのが筋じゃねえのか」
夢五郎はそうまくし立てると、笑った。
「ま、私も同じ男だ、元旦那の言い分が丸っきり判らないというわけでもねえ。私も姐さんにはひとめ惚れしたクチゆえ、残念といえば残念だけど。しかし、嫌がるものを無理に押し倒しても、お互いに後味が悪いだけだと私ならばそう思うがねえ。姐さん、先刻も言ったが、姐さんは何も悪くはねえさ。ただ、そんな風に生まれついちまったことは不幸だとは思うが、人間、何も色事だけで生きてるわけでもねえし、それだけが世のすべてというわけでもねえ。考え方はたくさんあるさ。その中、姐さんの考え方を理解してくれる男が現れないとも限らないし、姐さんが二度と男に頼らねえ暮らしがしたいならば、それも良し。姐さんは姐さんの好きなように生きたら良い、昔の嫌なことは全部忘れて生まれ変わるんだ」
「―夢五郎さん、私、本当に間違ってない? 悪くないの?」
泉水が泣きながら言うのに、夢五郎が幾度も頷いた。
「そんなことは気にすることはねえさ」
ややあって、夢五郎が言った。
え、と、泉水が弾かれたように顔を上げる。
視線が交わった夢五郎がニッと笑った。
「姐さんはそれが嫌なんだろ? それで、家を飛び出しちまったんだろう。姐さんには姐さんの考え方、感じ方がある。それは仕方のないことだし、他人から変えろと言われても、土台変えられるもんじゃねえ。人にはその人らしく生きることのできる権利ってものがある。我が儘を通すとかいうんじゃなくて、その人が人間らしく生きられる最低限の権利とでもいうのかな。悪いが、姐さんの旦那―元旦那か? そいつは、姐さんの気持ちを端から少しも理解してやろうとはしてねえじゃないか。男なら、ちったア、手前の気持ちだけを相手に押しつけるんじゃなくて、惚れた女の心を思いやるってのが筋じゃねえのか」
夢五郎はそうまくし立てると、笑った。
「ま、私も同じ男だ、元旦那の言い分が丸っきり判らないというわけでもねえ。私も姐さんにはひとめ惚れしたクチゆえ、残念といえば残念だけど。しかし、嫌がるものを無理に押し倒しても、お互いに後味が悪いだけだと私ならばそう思うがねえ。姐さん、先刻も言ったが、姐さんは何も悪くはねえさ。ただ、そんな風に生まれついちまったことは不幸だとは思うが、人間、何も色事だけで生きてるわけでもねえし、それだけが世のすべてというわけでもねえ。考え方はたくさんあるさ。その中、姐さんの考え方を理解してくれる男が現れないとも限らないし、姐さんが二度と男に頼らねえ暮らしがしたいならば、それも良し。姐さんは姐さんの好きなように生きたら良い、昔の嫌なことは全部忘れて生まれ変わるんだ」
「―夢五郎さん、私、本当に間違ってない? 悪くないの?」
泉水が泣きながら言うのに、夢五郎が幾度も頷いた。
