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胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】

第24章 再会

 運命という風に翻弄される一人一人の人間たち。その人が生まれながらに背負った宿業の前では、所詮、どれほどあがこうと無駄なことなのかもしれない。どれだけ抵抗しようと、人は風によって運命のままに流され、運ばれてゆく。
 それでも。
 運命に流されて辿り着く先がどこなのか、そこで何が待ち受けているのか。
 泉水は知りたいと思った。ただ流されるだけでなく、時には無駄と知りつつもささやかな抵抗もして、自分らしく生きてゆきたい。流れに身を任せたその先に何があるのだろう。かつて切ないほどに愛しく思った男、その男を苦しめてまで選び取った道。今はその道をまっとうすることが自分にできる唯一の選択であった。
 泉水は決意を秘めた瞳で、冬空に舞う雪のかけらをいつまでも見つめていた。

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