
胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第33章 儚い恋
あれ以降、兵庫之助と逢うことはなく、刻は過ぎている。あの日の出来事がもうはるか昔のことのように思えた。この六年間というもの、泉水にとっては色々なことがありすぎるほどあった。たった六年の歳月がまるで何十年分にも感じられる。
泉水が感慨に囚われていると、兵庫之助が泉水をまじまじと見つめた。
「それにしても、別嬪になったなあ。あの、男みてえな小娘がこうも変わっちまうなんて、思いもしなかったぜ」
その余計なひと言に、泉水が兵庫之助を軽く睨む。
兵庫之助は慌てて言い直す。
「いや、その、何だな、どこから見ても男にしか見えねえ―もとい、男勝りのお転婆姫がこんなにしとやかできれいな女になるたァ、お釈迦様でも想像つかねえや」
「もしかしたら、賞めて下さってるつもりなのかもしれませんが、何だか、全然救われない言い方なんですけど」
泉水が頬を膨らませると、兵庫之助は肩をすくめた。
「もちろん、賞めてるんだよ。でも、外見はまるで別人になっちまったけど、どうやら中身の方はとんと変わっちゃアいねえようだな」
「それ、どういう意味ですか!?」
実に久しぶりに味わう軽妙洒脱なやりとりに、泉水はいつしか心に溜まった憂さも忘れていた。
「つまり、お転婆姫はお転婆姫のままだっていうことさ」
あっさりと返され、泉水はすっすり毒気を抜かれてしまった。
「失礼ね、私、これでも、もう二十三になるのですよ。それが、仮にも二十三にもなる女におっしゃる科白ですか!」
「へえ、そいつは、どうも失礼しました。どう見たって、二十歳そこそこにしか見えねえけどな、もう、そんなになるのか」
兵庫之助がしきりに感心したような顔で頷いている。
「どうせ、私はいつまで経っても小娘ですよ」
泉水がむくれる。そんな泉水を見て、兵庫之助は声を立てて笑った。
「良いじゃねえか。女は普通、歳より若く見えるって言われれば歓ぶもんだろ」
「若く見えると言われるのと、小娘にしか見えないと言われるのは全然違います」
泉水は、その辺を強調する。が、兵庫之助は首を傾げた。
泉水が感慨に囚われていると、兵庫之助が泉水をまじまじと見つめた。
「それにしても、別嬪になったなあ。あの、男みてえな小娘がこうも変わっちまうなんて、思いもしなかったぜ」
その余計なひと言に、泉水が兵庫之助を軽く睨む。
兵庫之助は慌てて言い直す。
「いや、その、何だな、どこから見ても男にしか見えねえ―もとい、男勝りのお転婆姫がこんなにしとやかできれいな女になるたァ、お釈迦様でも想像つかねえや」
「もしかしたら、賞めて下さってるつもりなのかもしれませんが、何だか、全然救われない言い方なんですけど」
泉水が頬を膨らませると、兵庫之助は肩をすくめた。
「もちろん、賞めてるんだよ。でも、外見はまるで別人になっちまったけど、どうやら中身の方はとんと変わっちゃアいねえようだな」
「それ、どういう意味ですか!?」
実に久しぶりに味わう軽妙洒脱なやりとりに、泉水はいつしか心に溜まった憂さも忘れていた。
「つまり、お転婆姫はお転婆姫のままだっていうことさ」
あっさりと返され、泉水はすっすり毒気を抜かれてしまった。
「失礼ね、私、これでも、もう二十三になるのですよ。それが、仮にも二十三にもなる女におっしゃる科白ですか!」
「へえ、そいつは、どうも失礼しました。どう見たって、二十歳そこそこにしか見えねえけどな、もう、そんなになるのか」
兵庫之助がしきりに感心したような顔で頷いている。
「どうせ、私はいつまで経っても小娘ですよ」
泉水がむくれる。そんな泉水を見て、兵庫之助は声を立てて笑った。
「良いじゃねえか。女は普通、歳より若く見えるって言われれば歓ぶもんだろ」
「若く見えると言われるのと、小娘にしか見えないと言われるのは全然違います」
泉水は、その辺を強調する。が、兵庫之助は首を傾げた。
