胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第8章 予期せぬ災難
このまま連れ去られるわけにはゆかない。泰雅に、泰雅にこのことを知らせなくては、私はここにいる、泉水はここにいると。
「話ができるのか?」
泉水を運んでいるらしい男が訊ねてよこす。視界はぼやけて、自分を覗き込む男の貌さえ定かには見えない。
泉水は小さく頷いて見せた。
「さかきばらの―」
榊原のお屋敷にこのことを知らせて欲しい。そう言おうとして、泉水は小さく呻いた。口中に鉄錆びた嫌な味がひろがる。コポッと音がして、唇から溢れた血が滴った。
「おい、大丈夫か!?」
男が慌てる。泉水は力なく眼を閉じた。
意識が沈んでゆく。まるで身体が急降下してゆくように、泉水の意識は底なしの闇に飲み込まれていった。
「話ができるのか?」
泉水を運んでいるらしい男が訊ねてよこす。視界はぼやけて、自分を覗き込む男の貌さえ定かには見えない。
泉水は小さく頷いて見せた。
「さかきばらの―」
榊原のお屋敷にこのことを知らせて欲しい。そう言おうとして、泉水は小さく呻いた。口中に鉄錆びた嫌な味がひろがる。コポッと音がして、唇から溢れた血が滴った。
「おい、大丈夫か!?」
男が慌てる。泉水は力なく眼を閉じた。
意識が沈んでゆく。まるで身体が急降下してゆくように、泉水の意識は底なしの闇に飲み込まれていった。