天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第5章 母子草
しかし、しばらく清冶郞からいらえはなかった。
「お眠りになられませぬか?」
八重が声をかけると、今度はすぐに返答が返った。
「こんな風にして誰かと共に眠るのは初めてだ。まだほんの幼い頃は乳母が添い寝をしていたが、その頃の記憶は殆どないのだ」
清冶郞は呟くと、そろそろと手を伸ばしてきた。八重がその小さな手を握ってやる。
「母上がもしお屋敷におわせば、私もこうやって母上とご一緒に眠ることもあっただろうか」
たとえ母子でも、三万石の大名家では共に枕を並べて眠ることはあり得ないと思ったが、今、清冶郞にそれを告げるのはあまりにも酷だ。
八重は微笑み、頷いた。
「さようにございますね。今日は色々とおありになったので、お疲れになられたのではございませぬか?」
だが、清冶郞からはまたも返事がない。
どうしたのかとそっと身を起こし、傍らの布団を覗き込むと、清冶郞はもうすやすやと寝息を立てていた。むろん、八重の手を握りしめたままである。
「お可愛らしいこと」
清冶郞が聞けば、また子ども扱いだと間違いなくむくれるだろう。しかし、あどけない寝顔を見せて眠るその顔は安らいでいて、涙が出そうなほど可愛かった。
「お眠りになられませぬか?」
八重が声をかけると、今度はすぐに返答が返った。
「こんな風にして誰かと共に眠るのは初めてだ。まだほんの幼い頃は乳母が添い寝をしていたが、その頃の記憶は殆どないのだ」
清冶郞は呟くと、そろそろと手を伸ばしてきた。八重がその小さな手を握ってやる。
「母上がもしお屋敷におわせば、私もこうやって母上とご一緒に眠ることもあっただろうか」
たとえ母子でも、三万石の大名家では共に枕を並べて眠ることはあり得ないと思ったが、今、清冶郞にそれを告げるのはあまりにも酷だ。
八重は微笑み、頷いた。
「さようにございますね。今日は色々とおありになったので、お疲れになられたのではございませぬか?」
だが、清冶郞からはまたも返事がない。
どうしたのかとそっと身を起こし、傍らの布団を覗き込むと、清冶郞はもうすやすやと寝息を立てていた。むろん、八重の手を握りしめたままである。
「お可愛らしいこと」
清冶郞が聞けば、また子ども扱いだと間違いなくむくれるだろう。しかし、あどけない寝顔を見せて眠るその顔は安らいでいて、涙が出そうなほど可愛かった。