天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第1章 第一話〝招き猫〟―旅立ち―
しかし、その増田屋と自分が一体、何の関係があるというのだろう。万屋が駄目なら、次は増田屋の倅と見合いをしろとでも言われるのだろうか。
弥栄がぼんやりと考えていると、弐兵衛は思いもかけぬことを言った。
「その増田屋さんからの話なんだが、今、政右衛門さんが出入りを許されているお屋敷で腰元を探してるというんだよ」
「腰元―?」
弥栄は自分でも判るほど素っ頓狂な声を上げた。
「ま、奥向きに仕える奥女中ってことだ。どうだい、弥栄。お前、行ってみる気はないか?」
あまりに突然の降って湧いたような話だ。
弥栄は丸い眼を見開き、伯父をまじまじと見つめた。
「でも、私なんかにそんな大切なお役目が務まるかどうか」
「いや、何も堅苦しく考える必要はない。先刻のお前のふるまいを見ていても、お前の機転が利くのはよく判っている」
弥栄が小首を傾げると、弐兵衛は珍しく眼尻を下げた。
「たった今、私が今日は暑いと言ったら、お前はすぐに立って障子戸を開けにいった。それだけ打てば響くだけの気働きのできる娘だ、たとえお武家さまのお屋敷にご奉公したとしても、立派にやってゆけると思うがな」
弐兵衛は淡々と言うと、更に弥栄を驚愕させることを言う。
「それに、あちらのお屋敷は単に奥女中を探しているというだけでもないんだ」
「と、いうと?」
弐兵衛は、弥栄がこの話に少々興味を持った風なのに、満足げに頷く。
弥栄がぼんやりと考えていると、弐兵衛は思いもかけぬことを言った。
「その増田屋さんからの話なんだが、今、政右衛門さんが出入りを許されているお屋敷で腰元を探してるというんだよ」
「腰元―?」
弥栄は自分でも判るほど素っ頓狂な声を上げた。
「ま、奥向きに仕える奥女中ってことだ。どうだい、弥栄。お前、行ってみる気はないか?」
あまりに突然の降って湧いたような話だ。
弥栄は丸い眼を見開き、伯父をまじまじと見つめた。
「でも、私なんかにそんな大切なお役目が務まるかどうか」
「いや、何も堅苦しく考える必要はない。先刻のお前のふるまいを見ていても、お前の機転が利くのはよく判っている」
弥栄が小首を傾げると、弐兵衛は珍しく眼尻を下げた。
「たった今、私が今日は暑いと言ったら、お前はすぐに立って障子戸を開けにいった。それだけ打てば響くだけの気働きのできる娘だ、たとえお武家さまのお屋敷にご奉公したとしても、立派にやってゆけると思うがな」
弐兵衛は淡々と言うと、更に弥栄を驚愕させることを言う。
「それに、あちらのお屋敷は単に奥女中を探しているというだけでもないんだ」
「と、いうと?」
弐兵衛は、弥栄がこの話に少々興味を持った風なのに、満足げに頷く。