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天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~

第7章 第三話〝凌霄花(のうぜんかずら)〟・蜜月

「これまで殿は清冶郞君のお身体をご案じなさるるあまり、ちと遠慮なさりすぎたのではございませんでしょうか。今日の一撃は恐らく清冶郞君のお心に響いたことと存じます。大丈夫にございますよ。清冶郞君は、きっとお判りになって下さいましょう。何よりご聡明なるお子さまにございますゆえ。親の知らぬ間に子は育つと申します。あまり、お心をお悩まされますな。殿は代わりのきかぬ大切な御身にございます」
 清冶郞は、きっと判ってくれる―、その言葉は嘉亨の落ち込んでいた心にかすかな希望を点した。春日井の微笑みに見送られ、その夜、嘉亨は奥向きを後にしたのであった。

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