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天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~

第8章 哀しい別離

「じゃあ、尚更じゃない。女なんて、お弥栄ちゃん、素直になって惚れた男の懐に飛び込んじまえば良いんだよ。お弥栄ちゃんは凌霄花が嫌いだって言ってたけどさ、あたしは、この花が好きさ。だって、素直じゃないか。あたしゃア、あの花を見てると、いじらしくなるよ。惚れた男に縋り、寄り添って生きてゆく可愛い女を見てるようでねぇ」
 おさんのしんみりとした声が八重の心に滲みた。
 夜風が出てきたのか、庭の凌霄花がわずかに揺れている。八重は淡い闇の底に沈んだ花をいつまでも食い入るように見つめていた。

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