
天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第9章 祝言
何故か嘉亨の声が嬉しげに聞こえる。
それまで緊張気味だった表情も弱冠綻んでいる。
「いいえ、妬いてなんか―」
言いかけた八重の耳許でまた声が囁いた。
―女なんて、お弥栄ちゃん、素直になって惚れた男の懐に飛び込んじまえば良いんだよ。
確か、おさんは言っていなかったか。
惚れた男と喧嘩別れして、男が逢いに来た時、おさんの母親は何度も言ったという。今、逢わなければ、一生後悔することになるよ、と。
もしかして、私も―?
八重は自問自答した。
今、ここで嘉亨に本当の気持ちを告げなければ、一生、後悔することになりはすまいか。
あの時、きちんと素直に自分の想いを告げていればと、おさんのように何度も過去を振り返ることになるのだろうか。
そう思った時、突き抜けるような想いが湧き上がってきた。
そんなのは厭!
長い一生を振り返った時、後でこうしておけば良かったと後悔するような生き方だけはしたくない。
清冶郞に最初から何もかも話しておけば良かったと悔いたように、嘉亨にも自分の気持ちを伝えていればと後悔するようなことだけにはなりたくない。
―でも、私、どうしても言えない。
八重は固唾を呑んだ。
いざ想いを告げようとしても、喉が張りついたように動かない、言葉が鉛になったように重く沈み込んで、引っ張り出そうとしても出てこない。
八重は泣きたくなった。こんなときは、自分の話し下手というか、感情表現の未熟さに自己嫌悪に陥ってしまう。
それまで緊張気味だった表情も弱冠綻んでいる。
「いいえ、妬いてなんか―」
言いかけた八重の耳許でまた声が囁いた。
―女なんて、お弥栄ちゃん、素直になって惚れた男の懐に飛び込んじまえば良いんだよ。
確か、おさんは言っていなかったか。
惚れた男と喧嘩別れして、男が逢いに来た時、おさんの母親は何度も言ったという。今、逢わなければ、一生後悔することになるよ、と。
もしかして、私も―?
八重は自問自答した。
今、ここで嘉亨に本当の気持ちを告げなければ、一生、後悔することになりはすまいか。
あの時、きちんと素直に自分の想いを告げていればと、おさんのように何度も過去を振り返ることになるのだろうか。
そう思った時、突き抜けるような想いが湧き上がってきた。
そんなのは厭!
長い一生を振り返った時、後でこうしておけば良かったと後悔するような生き方だけはしたくない。
清冶郞に最初から何もかも話しておけば良かったと悔いたように、嘉亨にも自分の気持ちを伝えていればと後悔するようなことだけにはなりたくない。
―でも、私、どうしても言えない。
八重は固唾を呑んだ。
いざ想いを告げようとしても、喉が張りついたように動かない、言葉が鉛になったように重く沈み込んで、引っ張り出そうとしても出てこない。
八重は泣きたくなった。こんなときは、自分の話し下手というか、感情表現の未熟さに自己嫌悪に陥ってしまう。
