
天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第9章 祝言
―最初から駄目だと思えば、上手くゆくものだって上手くはゆかない、失敗するさ。要は、何とかなると思うことさ。何とかなると思やァ、不思議なもので、人間は自分でも思わぬほどの物凄い力が出るものでね。
おさんの言葉を思い出した刹那、その言葉が八重の背中を押してくれた。
「もう一度、私を殿のお側に置いて頂けますか?」
あるだけの勇気を拾い集め、やっと言葉を絞り出した。言うだけ言ってしまうと、真っ赤になって顔を伏せた。
もう恥ずかしくて、嘉亨の顔をまともに見られない。穴があれば、そのまま隠れてしまいたい。
短い沈黙の後、嘉亨がわずかに緊張を滲ませた声で問うた。
「それは、奥女中としてという意味だろうか。それとも、私の妻としてということだろうか」
八重が大きな眼を見開く。
嘉亨がやや上ずった声で言った。
「私の許に嫁ぐということは、ただ私個人の妻になるだけではない。そなたは、木檜藩三万石の藩主の正室となるのだ。これまでとは暮らしもしきたりも異なるゆえ、戸惑うことも多かろう。それでも、私に―木檜嘉亨に付いてきてくれるか? 木檜藩主の妻となってくれるか?」
「―はい」
声は小さかったけれど、少しの躊躇いも見せず、八重は頷いた。
おさんの言葉を思い出した刹那、その言葉が八重の背中を押してくれた。
「もう一度、私を殿のお側に置いて頂けますか?」
あるだけの勇気を拾い集め、やっと言葉を絞り出した。言うだけ言ってしまうと、真っ赤になって顔を伏せた。
もう恥ずかしくて、嘉亨の顔をまともに見られない。穴があれば、そのまま隠れてしまいたい。
短い沈黙の後、嘉亨がわずかに緊張を滲ませた声で問うた。
「それは、奥女中としてという意味だろうか。それとも、私の妻としてということだろうか」
八重が大きな眼を見開く。
嘉亨がやや上ずった声で言った。
「私の許に嫁ぐということは、ただ私個人の妻になるだけではない。そなたは、木檜藩三万石の藩主の正室となるのだ。これまでとは暮らしもしきたりも異なるゆえ、戸惑うことも多かろう。それでも、私に―木檜嘉亨に付いてきてくれるか? 木檜藩主の妻となってくれるか?」
「―はい」
声は小さかったけれど、少しの躊躇いも見せず、八重は頷いた。
