天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第9章 祝言
「よく眩しいものを見るように眼を細めておいでにございますが、私にどこか至らぬところがあるのでございましょうか。私も殿の妻になったからには、至らぬところがあればお伺いし、直すように心がけねばならぬと存じまして、お訊ねさせて頂きました」
「眩しいもの、か」
嘉亨が呟く。
「はい、まるで太陽を見たときに眩しくて、思わず額に手をかざしてしまうような、そんな感じにございましょうか」
八重が感じたままを言うと、嘉亨は笑った。
「太陽か、それは良い。確かにさもありなん。八重は私の太陽ゆえな」
「は?」
八重は、その言葉の意味を計りかねた。小首を傾げると、嘉亨は笑いながら首を振った。
「良い。いずれ、そなたにも判るときが来よう」
不安顔の八重の額を嘉亨がチョンと人さし指でつつく。
「安心せい。別にそなたに落ち度があるゆえではない。むしろ、その逆だ」
嘉亨は八重を安心させるように笑いかけ、 ふと思い出したように言った。 「いつか、そなたが私に訊ねたであろう、恋愛話をするほど親しい間柄の者がいるのかと」
唐突に振られた話題に八重は眼を見開いたが、それが四月(よつき)ほど前、随明寺の絵馬堂前で交わした会話であったことをすぐに思い出した。
「はい、確かに憶えておりまする」
あの時、嘉亨が絵馬堂に願掛けすれば、恋愛に効験があるとお付きの奥女中から聞いたと言ったのだ。
一瞬でも八重は内心、その見たこともない奥女中に嫉妬したことは事実であった。むろん、そんな妬心などは嘉亨には露ほども見せてはおらぬつもりではあったが。
「眩しいもの、か」
嘉亨が呟く。
「はい、まるで太陽を見たときに眩しくて、思わず額に手をかざしてしまうような、そんな感じにございましょうか」
八重が感じたままを言うと、嘉亨は笑った。
「太陽か、それは良い。確かにさもありなん。八重は私の太陽ゆえな」
「は?」
八重は、その言葉の意味を計りかねた。小首を傾げると、嘉亨は笑いながら首を振った。
「良い。いずれ、そなたにも判るときが来よう」
不安顔の八重の額を嘉亨がチョンと人さし指でつつく。
「安心せい。別にそなたに落ち度があるゆえではない。むしろ、その逆だ」
嘉亨は八重を安心させるように笑いかけ、 ふと思い出したように言った。 「いつか、そなたが私に訊ねたであろう、恋愛話をするほど親しい間柄の者がいるのかと」
唐突に振られた話題に八重は眼を見開いたが、それが四月(よつき)ほど前、随明寺の絵馬堂前で交わした会話であったことをすぐに思い出した。
「はい、確かに憶えておりまする」
あの時、嘉亨が絵馬堂に願掛けすれば、恋愛に効験があるとお付きの奥女中から聞いたと言ったのだ。
一瞬でも八重は内心、その見たこともない奥女中に嫉妬したことは事実であった。むろん、そんな妬心などは嘉亨には露ほども見せてはおらぬつもりではあったが。