天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第12章 真実
「お可哀想に、ずっとお一人でお苦しみになられていたのでございますね。さりながら、やはり、そのことについては、殿がこれまで奥方さまに何もお話しにならなかったのであれば、殿のお考えがあってのことなのでございましょう。奥方さま、一人でお悩みなされず。思い切って殿にお心の内をお話しになってご覧あそばされてはいかがにございますか」
「飛鳥井―」
涙に濡れた眼で見上げると、飛鳥井は微笑んで頷いた。
「大丈夫でございますよ。お方さまは、これからお母君さまになられるのでございましょう、母は強しといにしえから申しますもの。悪阻の方もあとひと月も経てば、嘘のように治まるはずです。あれは病気ではございませぬ。お腹で赤児(やや)さまがお健やかにお育ちあそばされておられる証にございますから。私も初めての子を身ごもったときには、随分と苦しみましたれど、いつ月に入る頃には、ふっつりと止みました」
八重が眼を見開いていると、飛鳥井は悪戯っぽく笑う。
「この私だって、今はお婆ちゃんにございますが、昔は若い頃だって、あったのでございますからね」
飛鳥井はもう一度、慈母観音のような笑みを見せて去っていった。八重が初めて見た飛鳥井の意外な素顔であった。
「飛鳥井―」
涙に濡れた眼で見上げると、飛鳥井は微笑んで頷いた。
「大丈夫でございますよ。お方さまは、これからお母君さまになられるのでございましょう、母は強しといにしえから申しますもの。悪阻の方もあとひと月も経てば、嘘のように治まるはずです。あれは病気ではございませぬ。お腹で赤児(やや)さまがお健やかにお育ちあそばされておられる証にございますから。私も初めての子を身ごもったときには、随分と苦しみましたれど、いつ月に入る頃には、ふっつりと止みました」
八重が眼を見開いていると、飛鳥井は悪戯っぽく笑う。
「この私だって、今はお婆ちゃんにございますが、昔は若い頃だって、あったのでございますからね」
飛鳥井はもう一度、慈母観音のような笑みを見せて去っていった。八重が初めて見た飛鳥井の意外な素顔であった。