天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第12章 真実
「さようにございますか、それでは私も申し上げまする。殿は私に何も話してはおらぬと仰せにございますが、そう仰る殿の方は、いかがにございましょうや」
「何のことだ」
憮然として言う嘉亨を、八重はキッと見据えた。
「殿ご自身におかれましても、私にお話しては下さってはおらぬお話がおありではございませぬか」
「そなた、一体、何が言いたい?」
嘉亨が心の奥底まで抉り取るような鋭い視線で射貫く。
「それでは、私の方より申し上げます。この上屋敷で芙蓉の間と称する開かずの間が存在することは、もとより殿もよくよくご存じにござりましょう」
「―それが、どうかしたのか」
抑揚のない、乾いた声。
その瞬間、八重の中でずっと降り積もっていたものが爆発した。
「ここまで申し上げても、殿はなお何もお話になっては下さらないのでございますね。私は、とうに気付いておりました。いいえ、最初から知っていたのです。殿がいまだになお、尚姫さまをひそかに愛していらっしゃることを。さりながら、その事実を知りながらも、私は敢えて殿に何も申し上げませんでした。もし、殿ご自身のお口から、真実をお聞きすれば、もうお側にいることは叶いませぬ。だからこそ、自分の気持ちを宥めながら、騙しながら、今日まで何もお訊きせずにいたのです」
「八重、何を言っている」
流石に、嘉亨の声に狼狽が混じった。
「何のことだ」
憮然として言う嘉亨を、八重はキッと見据えた。
「殿ご自身におかれましても、私にお話しては下さってはおらぬお話がおありではございませぬか」
「そなた、一体、何が言いたい?」
嘉亨が心の奥底まで抉り取るような鋭い視線で射貫く。
「それでは、私の方より申し上げます。この上屋敷で芙蓉の間と称する開かずの間が存在することは、もとより殿もよくよくご存じにござりましょう」
「―それが、どうかしたのか」
抑揚のない、乾いた声。
その瞬間、八重の中でずっと降り積もっていたものが爆発した。
「ここまで申し上げても、殿はなお何もお話になっては下さらないのでございますね。私は、とうに気付いておりました。いいえ、最初から知っていたのです。殿がいまだになお、尚姫さまをひそかに愛していらっしゃることを。さりながら、その事実を知りながらも、私は敢えて殿に何も申し上げませんでした。もし、殿ご自身のお口から、真実をお聞きすれば、もうお側にいることは叶いませぬ。だからこそ、自分の気持ちを宥めながら、騙しながら、今日まで何もお訊きせずにいたのです」
「八重、何を言っている」
流石に、嘉亨の声に狼狽が混じった。